マンスリーレポート

  1. TOP
  2. マンスリーレポート
  3. 電気代支出の地域傾向

電気代支出の地域傾向

2020.06.27

緊急事態宣言の発令や、新しい生活様式の実践などで、在宅勤務・テレワークを実施されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
在宅時間が長くなるなど、平時とは異なる状況で、消費支出の割合も変わってきているものとみられます。

その中で、今回のレポートは電気代支出にフォーカスし、

1.過去年次のデータによる平時の電気代支出の地域傾向とその理由を考えてみる
2.現在の家庭の電力事情について、筆者の実体験やネット上の声からレポートする

という2つの観点からまとめていきたいと思います。

1-1.平時の電気代支出額の地域傾向 データの確認

電力単価は各地域、電力会社ごとに異なっており、地域差の出やすいデータといえます。では実際はどのような結果になっているのでしょうか。

2016年の世帯当り電気代支出額(図1)を見ると、大まかな区分として北海道や東北から北陸にかけての日本海側地域、四国などで高支出となっています。(図1:画像クリックで47mapsサイトにジャンプします)

但し、電力単価に地域差があるため、高支出の理由が地域で異なる可能性があります。そこで、全国の電力会社の電力単価(表1)と都道府県別の家庭での世帯当り電力消費量(図2)を見ていきます。なお、電力会社については旧分類における一般電気事業者(東京電力など)を対象としています。
電力使用量は各世帯によって異なりますが、ここでは契約アンペア数を30A、月の電力消費量を300kWhとした場合ひと月当たりの電気料金を適用しています。

これを見ると、最も電力単価の低いのは北陸電力となっています。図1で高支出だった地域と比較してみると、北海道は最も電力単価の高い地域、北陸は最も電力単価の低い地域と、この2地域では同じ高支出でも単価の面では大きな違いが表れています。

続いて、電力消費量についても見ていきます。(図2及び表2)

これを見ると、世帯当りの電力消費量は福井県・富山県・石川県の3県が上位3位となっています。3県とも最も電力単価の低かった北陸電力の営業エリアとなっており、いずれも電力消費量が8000kWhを超えるなど、特に電力消費の激しい地域となっています。北海道の消費量は4000kWhを少し上回る程度で、順位も46位と、電気代支出額の高さとは裏腹にかなり低い数値になっています。

北陸地方は電力単価が低いため他地域より多く消費しがちなのではとも考えられますが、それを考慮してもかなりの電力を消費していることから、なぜこのようになっているのかにフォーカスしたいと思います。

1-2.平時の電気代支出額の地域傾向 北陸地方の傾向

1-1では都道府県別の電力消費量を見ていきましたが、寒冷地かつ電気代が高支出という似た傾向を示す北海道と北陸を比べてみると、電力消費量の順位では真逆といっていい結果になっていました。これはいったいなぜなのでしょうか?

筆者なりにその理由を考えてみました。

電気代のかかるものといえば、エアコンなどの冷暖房が思い浮かびます。

北海道と北陸で考えてみると、どちらも寒冷地ではあるものの、北陸の夏はかなり暑くなるイメージがあります。

とすると、エアコンの所有台数(普及率)はどうなのだろうと思い、実際のデータを調べてみました。
2014年の全国消費実態調査結果では北陸地方は世帯当り1台以上エアコンを所有している割合は95.1%、さらに、4台以上エアコンを所有している割合が41.6%に達するなど各家庭へのエアコンの普及率の高さが判明しました。対照的に北海道では1台以上所有している割合で見ても26.6%と極めて低くなっていました。

エアコンは暖房機能も併せ持つ場合がほとんどですが、北海道はエアコン普及率や電力消費量を見る限りエアコンを暖房のメインにはしていなさそうです。

さらに付け加えると、北海道では夏でも早朝などで気温が低い場合があり、そういったときはストーブをつける場合もあるそうです。ストーブといえば一般的には石油(灯油)ストーブが連想され、灯油代支出額を見てもこれはうなずけます。(図3:画像クリックで47mapsサイトにジャンプします)

これらをみるに、もしかすると北海道と北陸の電力消費量の差はエアコンの有無という所が大きいのかもしれません。気候により使用する機会・期間に幅が出るであろう冷暖房の部分が一つ要因となるのではないでしょうか?

2. 現在の電力消費について

ここからは現在の状況についてのレポートです。筆者も在宅勤務(テレワーク)中であり、その実体験について簡単ではありますが、レポートしていきます。

平時の場合、平日は自宅を不在にすることになりその間の電気代はかなり抑えられる状況でしたが、在宅勤務によりその時間も電力を消費することになります。PCを利用するための電気はもちろんですが、このほか冷暖房や照明も必要になるケースが出てきます。これらは最低でも約8時間×5日の40時間分が1週間のうちに増加することになり、これが1か月続くとさらに電力消費量が増加することになります。特に単身の場合はかなりの増加幅になり、筆者としても電気代について少し懸念している所です。

筆者の3月・4月の電気使用量・請求金額を比較すると、消費電力量は118.67%、請求金額は111.94%となっており、やはり電気代は高くなっていました。
計測期間の都合上厳密には緊急事態宣言発令と日時がずれる形になりますが、電力消費・電気代増は確かな状況となっています。

また、筆者の場合は、3月分の使用期間内では在宅時はほぼ常時エアコンを稼働させていましたが、4月分の期間では一度も稼働させていない状況でも請求金額は高くなっていました。今後もテレワークが継続され、夏季に入っていけば再びエアコン(冷房)の出番があるため、より金額が上昇する可能性もあります。

同様に、SNS等のネット上の声としても、「実際に電気代が上昇している」「電気代の請求額が不安」といった声が聞かれます。また、テレワークに限らず、時短勤務や自宅待機でも同様のことが言え、家計へ与える影響の一つとして大きなものがありそうです。今回取り上げた北陸地方は新型コロナウイルスの陽性率の比較的高い地域だったこともあり、もし全国的に第2波・第3波が発生すると、電力消費増への影響も大きくなるかもしれません。

3. 終わりに

今回は過去年次データによる平時の電気代支出の傾向と現在の電気代支出に関する筆者の実体験レポートをあわせてご紹介しました。今後は電気代のみならず、様々な消費支出額に大きな変化が出てくる可能性もあります。

日本のみならず世界中が大変な状況となっており、日本では緊急事態宣言が解除はされましたが、まだ予断を許さない状態です。
コロナウイルスは終息したわけではなく、ソーシャルディスタンスをとる、マスク着用を意識するなど、感染対策をまだしっかりやっていかなければなりません。
電気代支出の増加などの課題点もありますが、テレワークが可能な業種・職種はそれを実行・継続するだけでも大きな社会貢献となりえます。
一人ひとりにできることを小さなことでも継続してこの危機を乗り越えていきましょう。

<参考資料>

経済産業省 資源エネルギー庁/都道府県別エネルギー消費統計
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/
energy_consumption/ec002/

統計局ホームページ/平成26年全国消費実態調査
https://www.stat.go.jp/data/zensho/2014/index.html

このレポートの全部または一部を無断でコピーすることは、著作権法上での例外を除き禁じられています。