マンスリーレポート
テレワークしてみた 3/3【実践編2】
前々回から続く連載テーマ「テレワーク」、第3回目は実践と対策編です。
昨今のコロナ禍の影響で、“出社せず、会社から離れた場所で働く”というテレワークのうち、“家で仕事をする”かたちが急速に広まりました。筆者もその一人で、バタバタの中で慌てて在宅勤務に移行しました。今回のレポートでは、テレワークを始めてみて困ったことやその対策、先人たちの工夫などについて紹介したいと思います。
1. 初めてのテレワーク・・・ではなかった
出社せず自宅を仕事場にするという働き方は初めての体験ですが、筆者は10年ほど前に長期出張でテレワークをしたことがあります。当時の弊社はテレワークの方法が確立する前で、システム管理部門の思惑通りにはいかず、試行錯誤した記憶があります。
当初は、出先のノートPCからVPN接続でデータセンターに繋ぎ、弊社のサーバ上で作業する方針でした。サーバ側のソフトを、ノートPCにインストールしている感覚で操作できるというソフトを利用する予定でした。事前準備として、作業用データをサーバにアップロードしてから出張に出かけました。
しかし出張先で実際に使ってみると、頻繁にPCのフリーズやネットワークの切断が起こり、仕事に使うには厳しい状態でした。Wi-Fiを有線に変更したり、システム管理部門にもいろいろと対策を講じてもらったりしましたが、あまり改善されず。結局のところ、サーバにアップロードしておいたデータをノートPCにダウンロードし、ノートPCをスタンドアロンで使う、という旧来的な方法でしのぎました。
しかしこの方法では、使いたいソフトが入ってない、使いたいデータベースにアクセスできないなどの制限がありました。そこでノートPCではできない作業はサーバを使うという方法をとったため、データが両方に分散することになりました。またネットワーク環境が悪く、ノートPCとサーバ間のデータダウンロード/アップロードに時間がかかり、最悪ファイルが壊れてしまうこともあり、ファイル管理にかなり神経を使いました。
出張が終わった後の後始末も大変で、メールの同期で面倒なことになりました。ノートPCで送受信したメールはメールサーバに残す設定にして、会社デスクトップPCにも入るようにしていたつもりが、設定に失敗していました。
10年前のテレワークの思い出は、(筆者個人の不手際もあるのですが)余計な手間が増え、処理時間が長くなった上にエラーも多く、とにかく面倒でストレスフルな働き方でした。
2. 家でテレワーク
今回の在宅勤務では、自宅に持ち帰ったノートPCから会社の自席PCを遠隔操作する方式をとっています。リモートデスクトップという方法です。
以前からWindows標準搭載のリモートデスクトップ機能を使うことはあったのですが、筆者の環境では、Windowsのリモートデスクトップでは画面再描画にタイムラグがありました。今回のテレワークに際して、弊社システム管理部門ではリモートデスクトップ用のソフトを採用しました。このおかげで再描画の遅れやフリーズはほぼ発現しなくなり、劇的に改善されました。
準備はとても簡単でした。リモートデスクトップのソフトを接続先と接続元にそれぞれインストールし、簡単な設定をするだけ。5分でできる手軽さでした。前もってデータをどこかにコピーしておくといったことも不要だったので、在宅勤務の指示が出てから即座に移行できました。
リモートデスクトップなら、ふだんの会社のPC環境がほぼそのまま再現でき、会社の自席PCからできることならすべて遠隔で操作できます。例えば、他のマシン上に構築されたデータベースを使うソフトでも、会社にいたときと同じように使えます。
会社では、自席PC以外に他のPC(部の共有パソコンなど)を使うことがありました。テレワーク中は、遠隔操作の接続先を他のPCに切り替えることで、複数台のPCの前に座っているのと同じように使えています。
筆者の自宅ではWi-Fiが届きづらい部屋があるのですが、その点さえ気を付ければ通信状態・速度に問題はなく、快適に動いています。
データやメールの管理もふだん会社にいるときと全く同じなので、テレワーク終了後に特別な後始末も必要ないと思われます。
今回テレワークをしてみて、会社のPC環境を自宅でほとんどそのまま再現できることが分かりました。ノートPCの画面の小ささや色味などに違いはありますが、機能的には十分です。筆者の仕事の場合、会社でも自宅でも変わりなくできます。これは個人的には驚きでした。苦労した10年前と比べると、隔世の感があります。
3. 集中力
さて、テレワークを始めて2か月近く経過した現在、筆者の感想としては、在宅勤務のメリットの方を大きく感じています。
なんといっても、邪魔が入らず自分のペースで集中できること。会社にいると、電話の応対や同僚との会話など、自分のタイミングではないところで集中を中断されることはよくありますよね。自宅だと外界の影響をあまり受けないので、不意に邪魔が入ることも少なく、一気に仕事がはかどります。
しかしその一方で、中断がないということは一息つくリフレッシュの機会がないということです。連続集中で効率が上がったかと思いきや、お昼過ぎにふと首や腰が痛いことに気づいて手を止めると、以降はなかなか集中できなくなりました。眠たいわけではないけれどぼんやりする、エネルギー0になっているような感覚です。
【対策】音で時間を区切る
自分でこまめに休憩をとればよいのですが、没頭してしまうとそれが難しい。そこで音を鳴らして時間経過を知るという工夫をしている人がたくさんいました。
・自宅の鳩時計の時報で休憩する
・スマホのアラームを1時間ごとに鳴らす
・好きな曲で1時間ほどのプレイリストを作る
筆者も音作戦を真似して、ケーブルテレビの音楽チャンネルを流しっぱなしにして、1時間番組が終わったら休憩する、という方法をやってみました。しかし筆者の場合、好きな曲が流れると意識がそちらに向いてしまったり(具体的には踊りだしてしまう)、逆に集中しているときは1時間番組が終わったことに気づかなかったりで、あまりうまくいきませんでした。さらに言えば、ケーブルテレビは3時間5時間拡大枠のプログラムが結構あるのです。
今では仕事に飽きてきたとき、気分に変化をつけたいとき、たまに音楽を流すくらいに落ち着きました。
【対策】時間を厳格に守る
1時間ごとの小休止のほかに、10時や15時など時間を決めて、少し長めの休憩を入れることも1日を新鮮な頭で乗り切るコツのようです。
数日の単位でみると、残業をしないことが疲れを溜めないコツです。
一人で仕事をしていると、気分がノっているときに長時間労働になりがちです。自宅にいるので残業に突入するハードルが低いことも実感しました。
テレワークは仕事の切り上げ時が一番難しい。キリが悪くても、時間が来たらバッサリ仕事を終わらせる思い切りが必要なようです。
4. 会社の椅子が恋しい
自宅で仕事を始めた当初、第1日目にして腰、肩、首が痛み出しました。椅子・机・ノートPCの画面の位置が合わないようでした。さらに没頭して連続集中、姿勢が固まってしまうようです。
同じような悩みを抱えている人は多いようで、解決策はネットの中にたくさんありました。積み重ねた雑誌でノートPCにゲタを履かせて高さ調整をする案、同じように椅子側の高さ調整をする案などを見かけました。在宅勤務に突入してからゲーミングチェアを買ったという人もいます。
【対策】動き回る
筆者はそこまで資金に余力がないので、椅子に座布団を敷いたりクッションを背中に当てたり、自室、居間、食卓など机と椅子を変えたりしてみましたが、どうにもしっくりきません。いろいろやっていて気付いたのですが、なぜか斜めに座る癖もあるようです。
筆者はどうにも良い位置関係を見つけられず、仕方がないので、今は自分がいろんな部屋に動くことにしています。同じ姿勢を続けることのないよう、いろいろな場所で仮住まい的に居所を変えながらごまかしている感じです。移動することで、ちょくちょく小休止を挟むことにもなっていて、結果オーライなのかもしれません。
しかし本格的に在宅勤務をするならば、疲れない机と椅子を新しく購入するかもしれません。会社の事務机と椅子の何気ない組合せが最強であることに気づきました。仕事をする姿勢を支えることに特化していたんだなぁとしみじみ思いました。
5. コミュニケーションは難題
弊社では以前から社内掲示板のグループウェアを利用しています。全社への通達、部内やプロジェクト単位での連絡などに使う習慣ができていたので、テレワークに移行して顔を合わせない環境でもさほど支障はないと思っていました。
しかし実際は、文章だけのやりとりは意思疎通やスピードに難点があり、ときには書き込んでいる間に相手も書き込んで、既に解決済みだったことが混乱することもありました。
また新着情報を逃さないよう何度も確認しなければならないので、かなりの煩わしさを感じています。
思えば、出社しているときは、早く解決したいときや入り組んだ用事のときは、その人の席まで話に行くか電話するなど、直接対話の手段をとっていました。
【対策】電話をかける
上記のようなすれ違い問題の解消のために、筆者の部署では積極的に電話を使おうということになりました。
「今電話したら仕事の邪魔かもしれない」「自宅というプライベート空間に電話をかけてよいものか」という逡巡がありましたが、時間をムダにしないために遠慮せず電話をかけよと部長から指示が出て、その後はスムーズに会話することができています。
気になる電話代は、iPhoneのFaceTimeを使うことで電話代ゼロにできます。FaceTimeのビデオ通話で久しぶりに同僚の顔を見て話すことができ、顔を見て話せば笑い合えることも多く、良い気分転換にもなっています。
会議にはグループFaceTimeの機能を使い、複数人でテレビ会議をしています。筆者は5年前に買ったiPhone6を未だに使っています。悲しいことにもう時代遅れのようで、複数人のグループFaceTimeでは映像なし・音声のみの参加しかできません(1対1なら映像も出ます)。十年ひと昔と言いますが、スマホの世界では5年で大昔です。技術革新のスピードは本当に早いですね。
6. 今したいこと
今、100円ショップに買い物に行きたい衝動に駆られています。テレワークの工夫をネットで探したり同僚に聞いたりすると、「百均アイテムを使って・・・」という話がよく出てくるのです。ノートPCの放熱と高さ調整のために本立てやワイヤーラックで台を作ったり、ハンカチスタンドをやることリストの整理に代用したり。
ですが、今は百均やホームセンターに買い物客が集中しているというニュースを見て、ガマンしているところです。
7. おわりに
筆者のテレワーク生活はそろそろ2か月近くになろうかというところです。最初は戸惑いもありましたが、今は快適な環境で仕事ができることに魅力を感じています。
一つひとつは些末なことなのですが、例えば同僚に気兼ねなく室温調整できるし、気温変化で服を着替えることも自由にできます。ふだんコンタクトレンズ装用でドライアイに悩まされていた筆者ですが、在宅メガネ生活で症状が出なくなりました。眠くなれば気軽に顔も洗えます。
とは言え100%テレワーク移行は、それはそれで問題が出てきそうです。意思伝達のスピード、社員の一体感といった問題もあるでしょうし、筆者の部署では印刷物を扱う業務などあり、物理的に会社での作業が必要なこともあります。
要はバランスの問題かな、と思います。例えば、テレワークを基本として月に数回出社する、逆に出社勤務が主体でテレワーク日を設定するなど、働き方を選べるとよいですね。
テレワークが日本の社会になじんでゆけば、子育てや介護、体調の不安、人との対面が苦手、住みたい土地と働きたい企業が離れているなど、週5日出勤が難しい様々な事情を抱える人にとって、働き方・働く場所の選択肢が増えると思いますし、そのような選択肢を用意する会社に優秀な人材が集まるようになるのかもしれません。ベンチャー企業などでテレワーク主体に切り替え、オフィス規模を縮小・移転してオフィス賃料のコストダウンを図る動きもあるようです。
いずれにせよ、コロナ以前・コロナ以後で意識の変革を迫られています。価値観も大きく変わっていくでしょう。それぞれがそれぞれの場所で輝けるように、今はお互いに協力し合い、この難局を乗り越えていきましょう!
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