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駐車場代の地域傾向

2020.04.08

弊社のWEB上での無料マッピングサービス「47maps」を用いて地域傾向を探っていくシリーズの第2弾となる今回は、世帯当りの駐車場借料支出額データ(年極や月極などの契約により継続的に家計が支払う料金)の地域傾向です。

一般的に、都市部ほど高くなる傾向を示すと予想できますがその実態はどのようになっているのでしょうか。さっそく見ていきたいと思います。(データはいずれも最新年次を適用)

1. データの確認

始めに市区町村別の駐車場借料支出額データ(図1)そのものを見てみると、高支出を示す赤い塗分けが多いのは関東・関西のほか、東海地方の一部も該当しています。このほか、各地方の主要都市部も高い数値を示しています。やはり、先に述べた通り都市部は高支出になるようです。(画像クリックで47mapsサイトにジャンプします)

[図1]世帯当り年極・月極駐車場借料支出額

駐車場借料は地価の影響を受けやすい為その影響を考慮すべく、都道府県別ではありますが公示地価平均データ(図2)を弊社マーケティングシステム「MDS」を用いてマップ出力しました。

[図2]都道府県別公示地価平均

関東や関西、東海(愛知県)はいずれも地価が高く人口規模も大きな地域で、中でも支出額上位を示すフラグの立っている地域(大阪市中心部)や東京23区については、公共交通機関が高度に整っており、かつ人口密度や事業所数密度の高さも考慮すると駐車場としての土地の不足という面も考えられます。これらの要因が組み合わさった結果、借料が高く出た可能性があります。また、面積当たりの自動車保有台数(図3)も見てみると先の都市部を中心に保有台数が多くなっていることがわかります。(面積は総面積から林野面積及び主要湖沼面積を除いた可住地面積を適用)

[図3]可住地面積当り自動車保有台数

都市部ではこのような状況となっていますが、このほか四国地方を見てみると駐車場借料支出額(図1)が高めの傾向を示しています。地価(図2)は都道府県平均をやや上回るくらいで平均並み。面積当り自動車保有台数(図3)は高くなく、都市部の傾向(高地価かつ保有台数が多い)とは少し違う部分を見せています。人口規模も決して大きいとは言えない状況にあり、なぜこのような結果になっているのか、推察したいと思います。

2. 四国地方の考察

面積当りの自動車保有台数の多さや高い地価といった駐車場借料が高支出の都市部に見られる傾向とは少し異なる傾向にある四国ですが、それでも高めの借料になるということは、その料金でも成り立つ理由があると仮定することができそうです。少し言い方を変えれば、「自動車を必要とする傾向が強い」ととることができます。

ですが、自動車以外の交通手段も同様に必要としている可能性があるため、あわせて検証していきます。
自動車以外の主な交通手段としては、鉄道・バス・タクシーといったところが考えられます。それぞれの支出額データを47maps上で表示したものが図4~6です。

[図4]世帯当り鉄道運賃支出額
[図5]世帯当りバス代支出額
[図6]世帯当りタクシー代支出額
[図7]世帯当り有料道路料支出額
[図8]自家用車での通勤者比率(四国地方)

バス代支出額(図5)は全国平均並ですが、鉄道運賃・タクシー代支出額(図4,6)は低調な状況です。また、有料道路料支出額(図7)が高く出ており、移動手段として自動車をメインにしている人が多いと推測できます。このほか、データ年次が古く補足的なものとなりますが、2010年度の自家用車での通勤者比率(図8)では、四国全体を全国と比較すると高い結果ではありませんが、それでもほとんどの地域で比率が40%を超えており、香川県に限定すると比較的高い傾向を見せています。関東や関西などの駐車場借料が高い地域は軒並み比率が低調で、それらの地域と比べると自家用車での通勤者比率は高くなっています。

3. 四国地方の考察 -自動車による移動

ではなぜ自動車での移動がメインになっているのかというところですが、まず挙げられるのは公共交通機関の利便性が低いという点です。古いデータになってしまいますが、国交省が平成22年度分としてとりまとめた地域公共交通活性化・再生総合事業の事例一覧では、既に路線バス事業が厳しい経営状況であることを示す調査結果が出されています。見方を変えると、バス事業が成り立ちにくい地域であるといえます。

四国は人口規模が小さく、かつ各地域に人口が点在する状況のため、路線拡充等の利便性向上をしようにも収益を上げにくいことから、不採算事業となってしまっています。加えて高齢人口の比率も高く、通勤・通学利用客という点による収益確保も難しいといえそうです。実際、日本バス協会の会員となっている四国内の全8事業者はいずれも赤字となっています。

鉄道の場合だと、JR四国はほぼ全線にわたって赤字路線となっているのが現状です。
利用者減による利便性の低下と、少子高齢化の負のサイクルが地方の公共交通にダメージを与えている状況が四国ではより顕著といえそうです。

これに加えて、本州との連絡をする場合鉄道が1経路なのに対し、道路網では3経路存在しており、本州へのアクセスの面でも道路(自動車)を用いたほうが利便性の点で優位だというのも大きな要因かもしれません。
本州・四国の連絡による経済効果は四国地方整備局が発表しているように大きなものがあることも含め、所謂「モータリゼーション」が深く浸透している現状がありそうです。

このような背景・状況から、必然的に自動車利用が交通手段の中心となってきたものと考えられます。

4. 終わりに

今回のレポートは駐車場借料支出額データから地域傾向を推察し、特徴のある地域をピックアップしてその要因を探るという流れでした。
四国地方は公共交通機関の利便性の問題から自動車による移動が多いと考えられ、となると駐車場は必須となります。
また、同様に公共交通機関への支出が低調な地域(東北、山陰地方など)と比べると公示地価平均が高い為、先の要件とあわせて駐車場借料支出額が高く出る結果の一因となった可能性がありそうです。

昨今では高齢ドライバーによる事故の問題も取り上げられており、モータリゼーションによる弊害も随所に出てきている中、今後の地方公共交通のあり方についても議論を進めていく必要がありそうです。

<参考資料>

国土交通省

地域公共交通活性化・再生総合事業 認定状況・事例一覧(平成22年度) (最終閲覧日:2020年4月1日)
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/
sosei_transport_fr_000065.html

日本バス協会

出版物紹介 (最終閲覧日:2020年4月1日)
http://www.bus.or.jp/about/syuppan.html

日本のバス事業2018 (最終閲覧日:2020年4月1日)
http://www.bus.or.jp/about/pdf/h30_busjigyo.pdf

国土交通省四国地方整備局

平成31年度 四国地方整備局記者発表資料 (最終閲覧日:2020年4月1日)
https://www.skr.mlit.go.jp/pres/
h31backnum/index.html

本四架橋開通による経済効果をとりまとめました
~平成30年の効果額は約 2.4 兆円、昭和63 年からの累計で約41 兆円~ (最終閲覧日:2020年4月1日)
http://www.skr.mlit.go.jp/pres/h31backnum/
i1695/190415-4.pdf

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